茨木のり子さんの詩集   Noriko Ibaragi


並木道の木々が少しずつ紅葉し始め、どこからか金木犀の甘~い香りもして

季節はすっかり秋になってきました・・・

私も人生の季節を半分を過ぎて、だんだん感性も感覚も神経も、ボディまでもが

図太くなりつつオバタリアン化しそうになった時、フッ と立ち止まり、開く詩集が

あります。

学生の頃、大切な方から頂いた ” 茨木のり子 ” さんの詩集です。

その中の ” 汲む ” という詩がオバタリアン化しそうな私を戒めてくれます

汲む   ー Y.Yに ー

 大人になるのは  すれっからしになることだと  思い込んでいた少女の頃

 立ち振る舞いの美しい  発音の正確な  素敵な女のひとと会いました

 そのひとは私の背伸びを見すかしたように  なにげない話に言いました

 初々しさが大切なの  人に対しても世の中に対しても

 人を人とも思わなくなったとき  堕落が始まるのね  堕ちてゆくのを

 隠そうとしても  隠せなくなった人を何人も見ました

 私はどきんとし  そして深く悟りました

 大人になってもどぎまぎしたっていいんだ  ぎこちない挨拶  醜く赤くなる

 失語症  なめらかでないしぐさ  子供の悪態にさえ傷ついてしまう

 頼りない生牡蠣のような感受性  それらを鍛える必要性は少しもなかったのだな

 年老いても咲きたての薔薇  柔らかく  外にむかってひらかれるのこそ難しい

 あらゆる仕事  すべてのいい仕事の核には  

 震える弱いアンテナが隠されている   きっと・・・・

 わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました

 たちかえり  今もときどきその意味を  ひっそり汲むことがあるのです

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